一般男性がレンタル彼氏やってみた

一般男性がレンタル彼氏やってみた

いつも見慣れていたはずの自分の顔が、スマホに表示されるWebサイトに掲載され全世界に公開されているのだと思うと、なんだか何者かに成れたかのような感覚があった。何となく嬉しくて当時何度もサイトを見返したのを覚えている。

まだ何も成していないというのに、弊社公式サイトに掲載されたキャスト一覧の一番下の末席に並ぶ自分の写真を眺めていると、漠然と「新しいことが始まるんだな」と、年甲斐もなく高揚していた。

先日の 11 / 6 で弊社の公式サイトに自身の顔写真が掲載されてから 早いことにもう 2 年が経過した。何者かに成れたと思えたあの感覚は、痛めの新人が抱いた恥ずかしい勘違いであったことに気づくのには、流石に十分な時間が流れたと思う。ちょうど節目のタイミングとなったため、レン彼 3 年生編突入として筆無精ながらこれまで振り返りをしたいと考えた。

文章自体はすぐ書き上げていたが内容がちょっとまずいんじゃないかとブログに投稿するのをウジウジしていた。文中で 「仕事」 と 「お客様」 と強調して言うのはレンタル彼氏という仕事に真摯に向き合っているためとご理解いただけると幸いです。

例によって花沢の駄文を読んでくれてる危篤な方々はご存知なように花沢は昨年3月から拠点を岡山に移している。23年11月の活動開始から現在まで活動の機会を得られていることは本当にありがたいことであると実感しています。

正直なところ、岡山に拠点を移す際に辞める考えもあった。晴れの国を謳う地方都市と、栄華極まる大東京様では言わずもがな集客の機会に雲泥の差があると思ったからだ。ちなみに晴れの国・岡山の降水量は他県の例年並みと実はそう大差がない。べつに岡山県をディスっているわけではないので岡山県民は振り上げたクワやらカマやらをどうか降ろしてほしい

どんなに良いサービス・良い商品も認知されなければないのと同じ。事前の調査で岡山に拠点を置く類似業種のXやWebサイトは確認してみたが、開店休業な印象のところがほとんどだった。岡山ではきっと難しい、花沢の大活劇もここまでか。

ただそれでも、弊社キャストの中には拠点を地方にしてる方が何人かおり、安定して活動できてる様子の人もいた。

「なので花沢さん次第ですよ」

強制や押し付けにならないよう、遠野店長はゆっくりと答えてくれた。なにより「地方拠点が活動のハンデということは一切ない」そう言われた気がした。

遠野店長のX。カウンセラー資格を持ってて実は広東語も操れる

それまでの都心部での活動は膨大な分母の前でたまたま当たったラッキーパンチもあったと思う、もう一度ゼロの状態から正味自分がどれほどのもんか試してみたくなった

「続けてみようと思います」

岡山レンタル彼氏爆誕の瞬間である

以前の記事にも書いたがレンタル彼氏は登録されていれば黙ってても毎月誰にでも十分な仕事があるわけではない。その依頼件数はキャストによりバラつきがある。華々しい活動を期待して安くはないキャスト登録料を支払い入店したのに半年間依頼ゼロで心折れたイケメン達がポコポコと辞めていく、これはもはや界隈のあるあるだ。

24年2月に書いたブログ。

来ないものを沼のワニみたいに待っていても仕方がない。そのため新天地にてもう一度自身の活動を見直す。ポストは宣伝であること意識、時折りもらうDMやLINEは丁寧に即レスを心がける。「DM問題」なんて単語があるようだけど僕は書面でのやり取りにこそ注力した

質問攻めのやり取りは正直ナンセンス。「おいくつですか?」「普段何されてますか?」「最近ハマってることは?」「どこ住み?」早く共通の話題を見つけるためにやってしまいそうだけどそんな惰性のメッセージを送ればノブと大吾がすかさず「ちょっと待てぇ」と青いボタンを押す。

「マッチングアプリじゃねぇんじゃ」心のノブが声を張り上げる

相手のこと全く知らないのに初手からなぜかお互い盛り上がれる人というのは存在する、誰に対してもそうあるように努めた。安定して活動できるようになるにつれ機会は減っていったがX上でのDM営業なんてのも当然した。

比較サイト「マイ☆ベスト」で業界2位と紹介される弊社「レンタル彼氏Warmrelation」。その御旗のもと、その虎の威を限度額いっぱいまで借り、あたかも100戦練磨の人気キャストのように振る舞うだけにとどまらず、マジックを点灯させて虎をセリーグ優勝まで導く勢いである。あいにく借りたのは狐ではなく狸だったが

https://my-best.com/6603

相手がXユーザーなら過去ポストは遡れるだけ遡る。LINEをもらえば断片的な情報からどんな人か予想する。そして一通一通刺しにいくつもりで返信する。

準備は入念に、刺すときは一瞬で。

逆に聞かれない限り自分の話はしないよう意識した

話は逸れるが、レンタル彼氏の正体は何の資格も持たない野生の一般男性。せっかく店の看板で以って「プロのレンタル彼氏」のフィルターが付いてるのに一般男性が一般男性の話をしても一般男性になるだけ。わざわざメッキを剥がすことはない。

というか、時間単価数千円する利用料を支払っていて「ふふ、僕普段は〇〇で働いてて」なんてキャストから言われて「そかそか普段は一般人だものね、わかっていますよ」と納得できる人っているのだろうか?

よく「お金をもらう以上はプロ」みたい話をする人がいる、あれは雇用者側の方便なのであまり好きではない。だが、ことレンタル彼氏においては、せめてキャスト側はそう思わないと。そうでないと安くない利用料の説明がつかない。そうだとしたところでやはり説明がつかないのは変わらないが。高い。

僕は仕事の話も友達の話も、なんならプラベの話は一切しない。

自分はお金を支払わなきゃキャストに会えないのに、このキャストの友達や同僚はたまたま友達というだけで無料で会えるのか。僕ならそう考えてしまう。

花沢がまだぷりぷり20代だった失われし古の時代に、接待的な付き合いで夜のドレスを纏ったお姉ちゃん達がいるお店にお酒を飲みに行ったことがある。

その時に接客してくれたお嬢さんは、当時普段は大学生で普通のカフェのバイトもしているが、特段何のスキルや資格も持ち合わせていなかった。

話も女友達とする世間話の延長のようなもの。つまらなかったわけではない、とても盛り上がる瞬間も多くあった。顔も可愛かったと思う。でもただそれだけだった。

時折差し込まれる彼女の日常の話。カフェバイト先の店長の話や大学の友人やゼミの教授の話。その度に募るもやもや

なぜ普段大学生の一般女性と酒を飲むのにお金を支払うのか。当時の少年花沢が学生キャバ嬢に感じてたものは、きっと今の花沢に対してもお客様が抱く可能性のある感情だと思う。

もちろん普段の属性が強みになることがあるのも理解できる

若く少し残る少年っぽさが可愛い現役男子大学生、あるいは精悍な20代前半の若者の笑顔を肴にしながらお酒や食事を楽しむ時間にお金を支払う価値を見出す人もいるのだろう

しかしながら間違いなく「どこにでもいる39のおっさんと金出してでも酒を飲みたい」ニーズはない

ニーズはなければ作り出す

「レンタル何もしない人」がなぜ何もしないにも関わらず1回10000円の料金設定で依頼が殺到するのか

特別でなくてもいいからお客様にとって特殊な存在でありたかった。「会ってみたくなる奴」でいようと心がけた、その為には多くは語り過ぎない。何者かになる必要などなかったのだ。

正味なとこキャストにもプラベがあるなんてのは当たり前の話、お客様だってそんなことは百も承知。それでも、わかっていたって聞きたくないこともある。自分が代金を支払い会っている男と、たまたま職場や学校が同じというだけ会える奴がいるなんてさ。キャストのプラベ話はそうしたことを想起させることを、自分の実体験から強く認識している。

話を戻そう

事前のDMに注力する一方で、デートの本番は力を抜いて臨むように心がけた。

新卒の頃、会社でプレゼンの準備をしていた時に言われた格言がある。

準備は100%、本番50%

似たようなので「本番で100%を発揮したいなら200%の準備をしろ」とか言われたりしたかな。要は、プレゼン成功のためには事前の準備を充実させ、プレゼン自体は50%の力でケロりとやれるくらいでないとダメだという教訓。「あの部分の発表うまく伝えられるかな」、「答えづらい質問をされたらどうしよう・・」こうした不安要素を残したまま挑んでる時点でそのプレゼンはきっとうまくいかない。

これはレンタル彼氏のデートにも言えることだと思った。

もしかしたら、その一回のデートだけで今生会うことはないかもしれない。そう思ったらその一回のデートを大袈裟ではなくお客様の一生の宝物になるような思い出にしたい。そうやって鼻息を荒く全身ガチガチの状態で臨んでも理想とするような時間は過ごせないんじゃなかろうか。50%の力でデートの当日に「はじめまして」の依頼者を楽しませるには、事前のDMに100%注力するのは当然だった。基準としてはダンディ坂野のゲッツ!をいきなりやっても爆笑させれるくらいの関係の構築を最低ラインの目安としている。

写真登録のみで集客できて、デート当日のはじめましての瞬間から会話を盛り上げられるならばそれに越したことはないし、実際そういう天才キャストさんは存在する。そうではない花沢は今日も愚直にDMを送る

それこそ本当の彼氏のように。仮に依頼に繋がる気配がなくとも、デートの終わった後でも。「30分後に東京の汐留に来れますか?」のような明らかに冷やかしとも取れる謎LINEにも「もしかしたら本当に困っているのかも。。?」と真摯に対応した。

そういう気持ちを心掛けてお客様には向き合ってきた、会うのにお金が必要だけどそれ以外は本物の彼氏と変わらないと。

赤信号で信号待ちしているだけでもスマホを開くくらい常にLINEかDMをしているので首はストレートネックになり視力はなぜか右目だけ悪くなった、深夜にラリーが続くこともあるため基本的にクマ目がちだ。

それでも全く苦ではなかった。

炭治郎は長男だからいろんなことに耐えられたが、僕は彼氏なので耐えられた。耐えられたどころかむしろ何かをできていることが嬉しかった。

そうした積み重ねは功を奏していたと思う。結果も伴っている。でも手応えは感じていなかった

予約時間が終わるたびこれでよかったかな?と自問する。

ただの面白いやつになっていないか、ただ少し気が利くだけの奴になっていないか、レンタル彼氏ってこういうことか?お客様の為になってる?求められてんのはこういうことか?平泉成のモノマネはしてもよかったか?何か言い知れない「足りてなさ」を感じていた。

そんな時にたまたまXで見かけたレンタル彼氏に関するポストが胸に突き刺さる

「レンタル彼氏なんてのは結局はママ活、飯奢られて時間の間お喋りするだけで金をもらえる楽な仕事でしょ?」

レンタル彼氏が?

飯奢られてお喋りするだけの?

楽な仕事?

 

そんな訳ないでしょうが!

1984年「北の国から」田中邦衛さんが演じた黒板五郎が不満を爆発させるシーン。気になる人は近くの40〜50男性を捕まえてモノマネをねだろう

心の五郎が声を荒げてしまったが、「レンタル彼氏」というワードから連想する自分の率直なイメージを改めて思い出す。

依頼を受けたらLINEやDMなど書面のやりとりを経て、デートへ行く。大抵は食事やお茶がメイン、そこももちろん利用者様の取り持ちだ。楽しくお喋りをし時間が来たら清算し解散となる。

 

そんな……わけ……ある……かもな……?

 

心の中の五郎が突然ひよりだす

ちょっと自信無くなってきたがレンタル彼氏の仕事を書面に起こせば上記の通りなのである。楽なお仕事、そう言われても仕方がないのだろうか?

確かに中には世間の抱く印象通り「楽なお仕事」のレンタル彼氏を期待して応募してくるキャストもいたと思う。でも、そうではない大半のキャストたちは、LINEを盛り上げ、体と顔を整え、玉石ひしめく有象無象の中から「是非僕を」と選んでもらえるようにプロフィールや写真を充実させる。デートが決まればどうやって彼女を喜ばそうか、どう楽しい時間を演出しようかと皆が頭を抱えながら日々真剣にお客様に向き合っている。

僕も含めそんな彼らも外から見れば「楽して金を稼ぎたいだけの男たち」になってしまうのか

あのポストが突き刺さったのは、それが正論の形をして多くの支持を得ていたからだ

胃袋がキューっとなる

実際僕が感じていた「足りてなさ」は、「こんなことで金をもらって良いのか」という気持ちに起因してる側面もある。

っと、すみません。熱盛が出てしまいました。

しかし、天啓は突然訪れた

いつもの通り私用の合間に機を見ては取り憑かれたようにDMやLINEを返している、もはやライフワークの様相である。

他愛のない雑談DMから、折に触れ次に会うのはいつ頃だろうかという話題になった時だ。

「花沢くんは好きとか会いたいとか言うてくれへんもんな」

何気なく放たれたお客様の一言

それは黄色い軌跡を残しながら、霹靂の一閃となり花沢の脳天を切り裂いた

それまでどんなに密にDMを重ねても、デートのご予約を頂いたとしても、好きや会いたいというワードは意図的に言うことを控えていた。レンタル彼氏に好きと言われても嬉しくないどころかキャストの見え見えの営業トークに嫌気する人が大半と考えていたからだ。

 

キャストの「好き」は営業、「会いたい」は予約入れろ

「I love you」を「今夜は月が綺麗ですね」と翻訳するより簡単だ

 

なによりキャストのそうした言動は、相手の気持ちを利用するものとしてしばしば忌避の対象となることを知っていた。

でもそうではなかった。

我々はレンタル彼氏。

お客様は「彼氏」をレンタルするのに対価を支払っている。

彼氏とは恋人のこと

レンタル彼氏が持つ本来遂げるべき本懐

たとえフェイクのようなレプリカと分かっていても、恋人から向けられる「好きだ」「会いたい」という言葉からしか得られない栄養素があったのだ

こんなんなんぼあってもいいですからね

もちろん、便利屋やただのお話相手、趣味の共有などの多様なニーズがこの仕事にはある。実際にそういう意図でご予約される方もいるし、そこにフォーカス当てて成果に繋げてるキャストもいる。なお、モノマネが上手いことが指名に繋がった話は今のところ聞いたことがない。

ただ、レンタル彼氏には類似の競合が多い。

プラベ男友達にはじまり、キラキラホストに性感セラピスト、マッチングアプリのハイスペ一般男性にSNSの裏垢男子と枚挙にいとまがない。ざっと考えてもお客様が「たまには男と触れ合いたい」と思った時にこれだけの選択肢がある、その中でどうすべきか。ひときわ制限の多いレンタル彼氏、どこでアドバンテージをとってくか。

考えなくてもわかる。他のどの競合よりも「理想の恋人」であることで特化していかんと。だって彼氏ですもん。

でないと、優しいだけ面白いだけの男に、きっとこの市場で

「真・女性に風俗は必要ですか?」©︎ヤチナツ
女風セラピとレンタル彼氏は一線を画すが、マインド面は共通するところもあると思ってる

お客様は「彼氏」をレンタルすることに対価を支払う。提供しないのはCSの高いサービスとは言えない。それなら恋愛感情もレンタルできなきゃおかしな話だ、平泉成のモノマネなどしている場合ではなかったのだ。

正解なんてない、むしろ大間違いなのかもしれない

それでもブラウザの検索窓に「レンタル彼氏」と入力してして弊社のサイトにたどり着いた人たちには、そこに至るだけの背景が間違いなくある

信じられないようなさみしさや生きづらさ、漠然とした不安。恋人からの好意の言葉を以ってでしか埋めることのできない心の隙間。

日本全人口のうち、果たして何人がそうした鬱屈した気持ちを抱えていて、その中の何%が「よしレンタル彼氏を呼ぼう」と思い至るだろうか

そんな商売、本来は成り立つわけがないのに、苦しくとも成り立っているのは、それだけレンタル彼氏を頼って弊社のサイトを訪れてきてくれるからだ。

銀河鉄道で有名な宮沢賢治は「真の幸福に至れるのであれば、それまでの悲しみはエピソードに過ぎない」と言った。

倉敷の水島臨海鉄道で有名な俺こと花沢賢治は「一人で抱え込めば悲しみだけだが、人に語れたのなら幸福への布石になるのではないか」と思う。

いろんなスタイルのキャストがいる

友達の延長のような接し方で人気のキャストもいるだろう

ガンダムの話になった時にすかさずアムロ・レイの真似ができる瞬発力が魅力の子もいる

それでも僕は気持ちや言動まで「彼氏」であることに拘った

好意を利用して手抜きをしたいわけではない、求められているものをしっかり提供したいだけ。

本来レンタル彼氏は対処療法、切羽詰まっていたり満たされない日々にほんの少しの寄り道。

何かができるなんて烏滸がましいのかもしれない

受け取った金額の分の時間を一緒に過ごしてイヤなことを忘れて

その中で最大のパフォーマンスを出すために

あなたは僕を好きでなくても、僕はあなたを好きになる

そうしてレンタル彼氏との接点の中で新しい発見や気持ちの切り替えがあり「ありがとう、もう大丈夫だよ」と言ってもらえたならば、こんなに嬉しいことはないと思う

ベイマックスはベイマックスもう大丈夫だよと言われるまでプログラムを終了できない
I cannot deactivate until you say you are satisfied with your care.

「レンタル彼氏なんて楽な仕事でしょ」

あのポストは突き刺さって今も抜けないけど、そうしてやってきたことが見える形で結果となったことは嬉しく思う。当時総勢約40名いるキャストの末席に位置していた39歳の一般男性は、遂ぞキャスト一覧の一番左上に表示されるに至った。

のめり込み「自力で抜け出せない」様子を「沼」と例えることがある

レンタル彼氏も例外ではない、自分に人を沼らせる器量があるとは思っていないが、もしそうならせめて苦しみのない幸せな沼に浸からせてあげたかった

幸せな沼なんてないのかもしれない

笑いの神様お願いです。

どうか明日も明後日も、メッセージで彼女を笑わせられますように

無宗教のくせに都合のいい祈りを捧げつつ、外から聞こえる朝刊を配る新聞屋さんの原付バイクのエンジン音を聞きながら、目の下のクマを抱いて今夜も眠る

「文章のクセがすごい!」

心のノブが叫んでいる気がした

明日の僕らは誰かの彼氏。

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